根管治療
「神経治療って、なんでこんなに時間がかかるのかな?」
「何度も通ってるけど、いつも同じことばかりで治療が全然進んでいない気がする…」
根管治療を受けたことのある方なら、こんな経験をしたことがあるかもしれません。
根管治療は、歯科治療の中でも特に根気が必要な治療です。そのため、治療期間が長くなりがちです。
そのため、途中で不信感を覚えたり、通院を中断したくなることもあるかもしれません。
このページでは、なぜ神経治療に時間がかかるのか、スムーズに治療を進めるためのコツなどを紹介しています。
根管治療の流れ
根管治療は通常、約2か月(5~10回)を要します。
ここでは、一般的な治療の進行手順についてご案内します。
治療開始前:口の中の検査・精密検査
通常、根管治療を受ける際には、口の中の検査や精密検査が行われます。
歯の状態を確認し、レントゲン撮影やCT撮影などの画像診断で状態を把握します。
その後、カウンセリングを経て治療方針を決定します。
抜髄(ばつずい)
レントゲンで虫歯の深さや膿の状態を確認し、麻酔の注射を行います(※神経が既に除去されている場合は麻酔は不要です)。
専用の道具を使って汚染された神経を除去し、根の深さを測定してから根内を消毒し、仮の蓋をします。
根管の中を清掃・消毒する
仮の蓋を取り外し、再度根内を消毒・確認します。
この工程を2~7回ほど繰り返し行います。
ここで消毒・確認を繰り返し、汚染された神経を完全に除去することがポイントです。
これを怠ると後から症状が再発したり、お痛みの出る原因になります。
根管の中に薬を充填する
治癒後、根内に細菌が侵入しないように薬を詰めます。
根の先まで薬が達するかをレントゲンで確認します。
土台を立てる
詰め物をした根管の上に土台を作り、神経除去後の歯を強化します。
土台は、金属製やプラスチック製などがあり、いずれかを選び、歯に立てます。
土台には、歯の補強や根管内に細菌が侵入しないように封鎖する役割があります。
クラウン(かぶせもの)をかぶせる
土台をつくったら、「クラウン」「かぶせもの」と呼ばれる人工の歯をかぶせます。
かぶせ物には保険適用のものから保険外のものまでさまざまな種類がございますので、ご自身に合ったものを選ぶようにしましょう。
最終的な被せ物を装着したら、治療は完了です。
根管治療の中断はとても危険です
根管治療は時間のかかる治療のため、患者さまの中には「痛くないからもういいや!」と途中で来なくなってしまう方もいます。
根管治療では、神経除去により痛みが徐々に減少しますが、途中で治療を中断すると神経を除去した空洞に細菌が入り込み、痛みや腫れを引き起こす可能性があります。
最悪の場合、歯を抜くことになるかもしれません。
とても手間がかかり大変な治療ですが、歯をより長持ちさせるために必要な工程ですので、頑張って治していきましょう。
治療中、少しでも疑問や不安に感じることがありましたら、遠慮せずにどんどんご質問ください。誠意をもってお応えさせていただきます。
成功率を上げるためのポイント
歯科用CTによる精密診断
根管治療を行うにあたり、根の形や病巣の位置・広がりを把握することは非常に重要です。
CT画像では、従来のレントゲン画像ではわかりにくいこれらの情報も3次元的に把握することができるため、より確実に治療を行うことが可能となります。
また、レントゲンでは発見できないような小さな病変も発見することができるため、今までの検査ではわからなかった痛みの原因についても把握し、対処することが出来ます。
当院では、必要に応じて歯科用CTを活用し、精密な審査診断の上で治療を進めております。
高倍率歯科用ルーペ(拡大鏡)を使用した精密治療
歯の根管内は非常に暗くて狭く、かつ複雑に枝分かれした構成をしているため、従来までは歯科医師の勘と経験に頼った手探りの処置をするしかありませんでした。
しかしながら、このような従来の方法ではどうしても細菌や汚れを完全に取りきることができず、中で再び細菌が繁殖し、症状が再発してしまうことが多かったのも事実です。
当院では、拡大鏡を使用してしっかりと目で確認しながら確実に汚れを取り除いていくことで再発リスクを減らすよう努力しております。
ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)
ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)とは、柔軟性が高くさまざまな形状の根管に対して適切な処置を行うことができる治療器具です。
根管治療では、虫歯に侵された神経を除去するために「ファイル」と呼ばれる器具を使用しますが、このファイルには大きく分けて二種類あり、ひとつが「ステンレスファイル」、もうひとつが「ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)」というものです。
多くの歯科医院ではステンレスファイルのみを使用していますが、当院では十分な柔軟性を持ち、より神経を除去できるニッケルチタンファイルも同時に導入しています。
超音波洗浄
根管治療の成功率を上げるためには、根管内の汚れを完全に除去し、無菌化することが必要となります。
通常は、ファイルを使用して根管内の汚れを除去した後、薬剤を使用して根管内の無菌化を図りますが、当院では、薬液による化学的な洗浄に加え超音波スケーラーを使用した根管内洗浄も行っております。
超音波洗浄を行うことにより、根管内の汚れを効果的に除去でき、通常では届きにくい根の先の隅々まで洗浄液を届かせることができます。
MTAセメント
MTAセメントとは、1998年にアメリカで販売され、日本では2007年に販売を開始した歯科用セメントです。
殺菌効果が非常に高く、虫歯の不活性化をはじめ、神経の保護や根管の内部を埋める根管充填などさまざまな処置で応用が可能です。
特に、虫歯が進行して神経にまで達した場合には、むし歯が進行したところまでの組織を取り除きMTAセメントによって蓋をすることにより、従来では神経を抜いていた症状でも神経を保存出来る可能性が高まりました。
ただし全てのケースに適応されるわけではなく、MTAセメントを用いた場合でも状態によっては抜髄が必要となるケースもありますので、まずは神経を残せる可能性があるかどうか、ご相談いただければと思います。
歯根端切除術 ~根管治療が難しい場合~
歯根端切除術とは、歯茎の外側からメスを入れ、感染した根の先の部分を根こそぎ取り除く方法です。
根管の形が湾曲しているため根っこの先まで器具が届かず清掃できないような状態の場合や、嚢胞があまりにも大きいなど、根管治療が難しい場合に行う治療法です。
しかしながら、歯根端切除術は外科手術であるため、手術前にはCT撮影をし、位置や状態を十分に確認したうえで行う必要があります。
また、外側からのアプローチとはいえ、骨の中の非常に見えにくい部分を治療するため拡大鏡などを使用してでしっかりと確認しながら治療を進めることが必要です。
破折した歯でも、諦めません。
抜歯しなくてはいけない原因として意外と多いのが、「歯根破折」という歯の根っこが割れてしまったことによる抜歯です。
8020推進財団による「永久歯の抜歯原因調査報告書」によれば、永久歯を失う原因として、歯周病(41.8%)や虫歯(32.4%)に次いで3番目に多いのが、破折(11.4%)による抜歯だそうです。
歯根破折になる歯のほとんどは抜髄済の歯であることから、何度も治療を繰り返した上での抜歯であるケースが多いのでしょう。
破折した歯を放置してしまうと、その隙間から細菌が入り込んで炎症を起こし周辺の骨を溶かしてしまう危険性があるため、今までの歯科治療では、歯根破折が起こってしまった場合は抜歯しか選択肢がない状態でした。
しかし今では、条件が合えば、歯根破折の場合でも歯を残すことができる治療技術が開発されています。
口腔外接着再植法
破折してしまった歯をいったん抜いて口の外に取り出し、破折してしまった部分をキレイに修復してから元の位置に再植する治療法です。
治療に時間はかかりますが、一度抜歯をして処置をするので炎症部分の除去なども確実に行うことができ、予後が安定しやすい治療法です。
対応している医院はあまり多くはありませんが、歯を残すための最終手段となる治療法といってもいいでしょう。
ただし、すべてのケースで適応できるわけではありませんので、まずはご相談いただければと思います。
ヘミセクション/トライセクション(分割抜歯)
分割抜歯(ヘミセクション/トライセクション)とは、歯の根が2本以上ある歯で、そのうち1本の根が損傷してしまったために抜歯が必要とされる場合に行われる治療法です。
この治療法は、問題(破折・むし歯)のある根と健康な値を切り離し、問題のある根だけを取り除き、健康な根を残すことを目的として行われます。
2本の根がある歯に対してこの治療を行う場合は「ヘミセクション」、3本の根がある歯に対して行う場合は「トライセクション」と呼ばれます。
ヘミセクションやトライセクションを行うことで、本来抜歯が必要とされた歯を残すことができる場合もあります。
しかしながら、すべての症例に適応できるわけではないこと、歯の根が一本なくなってしまうため、通常の歯と比べると弱くなってしまうという欠点もありますので、歯科医師とよく相談して治療方法を検討するようにしましょう。